かつては財産は子孫に残すものという考えが主流だったが、今の50〜60代は「子どもの世話にならない代わりに、財産は自分で使いきる」という意識に変わりつつあるという。子どもとしても親の財産をあてにする気はないが、親の本音をもっと掘り下げてみると・・・。
ライフデザイン研究所の調査によれば、居住用不動産は78.4%が「できるだけ残してやるのがよい」と考えている。
とあるアンケート調査でも「バブル崩壊で心もとない子どもに対し、美田でも残して子孝行をするのが最良のオヤジであろう」という意見まであり、子どもになにがしかを残そうという気は案外あるらしい。
が、金融資産となると話は別。65.0%が「残す必要はない」としており、金融資産は自分たちの老後を豊かにする費用にしたいという考え方が主流だ。
財産を残すつもりとわかると、必然的に「誰に?」という疑問がわく。地域別に行われた国民生活選好度調査によれば、とりあえず「子ども全員に財産を分けたい」人が圧倒的だ。
子どもへの相続問題がまだ現実的ではない年代の余裕ある発言と思えなくもないが、実際に分けるとなると、長男あるいは同居や介護をした子どもが優先的に受け継ぐケースが多い。とくに山形県と新潟県では長男優先の割合が高く、具体的に「誰が受け継ぐか」には若干の地域差がある。
高齢化社会と少子化がこのまま進めば、子ども1人にのしかかる負担がいや応なく増える。1人っ子同士の夫婦がお互いの親4人を同時に扶養しなければならなかったり、「夫は長男、私は次女ですが、親は私に面倒をみてほしいという。夫の仕事のことを考えるとむずかしく、この話題になると夫と険悪になり困っています。夫の両親は片方が亡くなったら東京に出てくるといっていますが、私の親は絶対動かない」(主婦・28歳)など、親の希望と子どもの都合がかみ合わないケースもある。
法律では、親の扶養についてどんなふうに定めてあるのだろうか。
『自分やその家族が生活して、ゆとりがある範囲で面倒をみる』。これが法律でいう親の扶養義務だ。この義務は子ども全員平等にある。したがって子ども同士で誰が一緒に住み、誰が費用を援助するか協議するのが原則だが、兄弟の中でゆとりのある者が扶養するのが一般的らしい。
どうしても話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所に調停を申し立てる。調停がまとまらないようなときは、家裁が審判して扶養方法と費用の分担を決めてくれる。扶養に協力しないほかの義務者に、自分の費やした扶養料を請求することも可能だ。
ところで、戦前は親を扶養する者が相続を受けられると考えられていたが、現在は扶養と相続は分けて考えられるようになった。つまり、扶養するか、しないかにかかわらず、相続の権利は子ども全員にあるのだ。相続できるのは配偶者と子ども、両親、きょうだいなどで、相続の割合は原則的に配偶者が2分の1、残り半分は子ども全員で平等に分ける。
ここで問題になるのが、同居して世話をする息子夫婦の立場。とくに息子の妻は、どれだけ世話をしても自分には法的に相続の権利がないうえ、夫とほかのきょうだいの取り分が同じでは不満が残る。
そこで、親が財産を扶養料として生前に贈与しておくのもよくあるケースだ。ライフデザイン研究所の調査でも「世話をしてくれた子どもにはその分多く財産を残したい」と思う親が7割以上。扶養する、しないが親の相続意識に影響するのは確かなようだ。法律は法律として、世話してもらうだけでは心苦しいという親ごころが反映されているのだろう。